非認知能力の測り方とは?家庭でできる評価方法と観察のポイント

非認知能力

非認知能力の測り方について、家庭でどう評価すればよいのか迷う保護者は多いでしょう。

学力テストのように明確な点数が出るわけではないため、こどもの能力が育っているのか、判断が難しいと感じるものです。

実は、この能力は数値化しにくい性質を持っているため、研究の場でも測定方法に工夫が必要とされています。

しかし、家庭では点数をつけることよりも、日常の行動を観察し、成長の変化に気づくことが大切です。

この記事では、非認知能力の測り方について、研究での方法と家庭でできる観察のポイントを詳しく解説します。

家庭でできる非認知能力の測り方の基本

家庭での非認知能力の測り方は、点数をつけることではなく、日常生活の様々な場面でこどもの行動を観察し、その変化や成長に気づくことです。

非認知能力の測り方について、多くの保護者は「どうやって評価すればいいのか」と悩みます。学力テストのように明確な点数が出るわけではないため、測定が難しいと感じるのは当然です。しかし、家庭では研究のような厳密な測定は必要ありません。大切なのは、こどもの行動を丁寧に観察し、成長の過程を見守ることです。

まず理解しておくべきは、非認知能力は学力テストのように数値化できない性質を持っているということです。「忍耐力は何点」「協調性は何点」といった評価はできません。また、状況によって発揮される程度が変わるため、一度の観察だけでは判断できません。学校では協調性を発揮できても、家庭では発揮できないこともあります。

だからこそ、家庭での測り方は「点数をつけること」ではなく、「日常の中で観察すること」が基本になります。朝の準備、食事の時間、遊び、宿題、習い事、友だちとの関わりなど、様々な場面でこどもがどんな行動をとるのか、どう反応するのかを見ることが、非認知能力を測る最も効果的な方法です。

観察のポイントは、具体的な行動に注目することです。「この子は忍耐強い」という抽象的な評価ではなく、「難しいパズルに30分取り組んで完成させた」という具体的な行動を見ます。「協調性がある」ではなく、「友だちとおもちゃを『一緒に使おう』と提案できた」という行動を観察します。

また、一度の行動だけで判断せず、長期的に見ることが重要です。今日できなかったことが、来週にはできるかもしれません。数ヶ月前と比べてどう変わったかという成長の変化に注目します。他の子と比較するのではなく、その子自身の過去と比較することが大切です。

家庭での測り方の目的は、こどもを評価し格付けすることではありません。その子をより深く理解し、どんな経験をさせればさらに成長できるのかを考えるための観察です。「非認知能力が低い」と判定することが目的ではなく、「この子は今こんな力を持っていて、これからこう成長できそうだ」と理解することが目的なのです。

このように、家庭での非認知能力の測り方は、日常の観察を通じて具体的な行動を見守り、長期的な成長を確認することが基本なのです。

では、研究の場ではどのような方法で非認知能力を測定しているのかを参考に見ていきましょう。

研究で使われる非認知能力の測定方法

研究で使われる非認知能力の測定方法には、質問紙調査、行動観察、実験的課題があり、それぞれに長所と短所があるため、複数の方法を組み合わせて評価します。

測定が難しい非認知能力ですが、研究者たちは様々な工夫をして測定方法を開発してきました。主に使われる方法は、質問紙調査、行動観察、実験的課題の3つです。それぞれの方法を理解することで、家庭での観察のヒントも得られます。

質問紙調査は、最も広く使われる方法です。例えば、やり抜く力を測るグリット尺度では、「新しいアイデアやプロジェクトが出てくると、以前取り組んでいたことから注意がそれることがある」といった質問に、1から5の段階で答えてもらいます。複数の質問の回答を合計することで、やり抜く力の程度を数値化します。質問紙調査の利点は、短時間で多くの人のデータを集められることです。

しかし、質問紙調査には限界もあります。自己評価は主観的であり、実際の行動と一致しないこともあります。また、社会的望ましさバイアスといって、「良い答え」をしようとする傾向があります。こどもの場合、質問の意味を正確に理解できないこともあります。そのため、本人だけでなく、保護者や教師からも評価を得る「多面評価」が用いられることもあります。

行動観察は、実際の行動を観察して評価する方法です。保育園や幼稚園での遊びの様子を観察し、「友だちとおもちゃを共有できた」「順番を待てた」といった行動を記録します。観察者は事前に定められた行動チェックリストを使い、特定の行動が現れた頻度や程度を記録します。行動観察の利点は、実際の行動に基づいているため、質問紙よりも客観的な評価ができることです。

しかし、行動観察にも課題があります。観察者の主観が入る可能性があり、同じ行動でも解釈が分かれることがあります。また、観察できる場面は限られており、たまたまその日の状態を反映しているだけかもしれません。さらに、観察には時間とコストがかかります。

実験的課題は、特定の状況を設定して、その中での行動を測定する方法です。最も有名なのがマシュマロテストです。4歳児に「今すぐマシュマロを1個食べてもいいけど、15分我慢したら2個あげる」という選択を与え、我慢できた時間を測定します。これにより、自制心を客観的に評価できます。

他にも、ストループテストやタワー課題など、様々な実験的課題が開発されています。ストループテストは、「赤」という文字が青い色で書かれているときに、色を答えるという課題で、注意のコントロール能力を測ります。タワー課題は、円盤を決められたルールに従って別の棒に移動させる課題で、計画性や問題解決能力を測ります。

実験的課題の利点は、標準化された条件下で測定できるため、客観性が高いことです。しかし、実験室での行動が日常生活での行動を反映しているとは限らないという課題があります。

研究では、これら3つの方法を組み合わせることで、より正確な評価を目指しています。質問紙で全体的な傾向を把握し、行動観察で実際の行動を確認し、実験的課題で特定の能力を客観的に測定するといった具合です。

このように、研究では複数の測定方法を組み合わせることで、測定が難しい非認知能力を多角的に評価しているのです。

では、家庭ではどのように非認知能力を観察すればよいのでしょうか。

家庭で非認知能力を観察する具体的な方法

家庭で非認知能力を観察するには、日常生活の様々な場面でこどもの行動や反応を意識的に見守り、年齢に応じた観察ポイントに注目することが重要です。

研究のような厳密な測定は家庭では必要ありません。むしろ、日常生活の中でこどもの行動を観察し、成長の変化に気づくことが大切です。点数をつけることが目的ではなく、こどもの強みや課題を理解し、適切な関わり方を考えるための観察です。

日常生活での観察ポイントとして、まず朝の準備の様子を見ます。自分から起きて着替えられるか、時間を意識して行動できるかは、自己管理能力の表れです。低学年では保護者の声かけが必要ですが、徐々に自分でできるようになる過程を観察します。

食事の場面では、協調性と自制心が観察できます。家族の会話に参加できるか、「いただきます」まで待てるか、食べたいものがあっても順番を守れるかといった行動に注目します。また、食事の準備や後片付けを手伝う姿勢は、責任感の表れです。

遊びの時間は、創造性と問題解決能力を観察する絶好の機会です。自分で遊びを考え出せるか、うまくいかないときにどう対処するか、新しいことに挑戦する姿勢があるかを見ます。また、友だちと遊ぶときの様子から、協調性や共感性を観察できます。

宿題や勉強への取り組みでは、やり抜く力と自己管理能力が見られます。自分から始められるか、難しい問題でも諦めずに取り組むか、計画的に進められるかに注目します。また、間違いをどう受け止めるかは、レジリエンスを示します。

習い事の様子も重要な観察ポイントです。練習を継続できているか、うまくいかないときにどう対応するか、先生や仲間との関係はどうかを見ます。発表会や試合での緊張への対処も、感情調整能力の表れです。

失敗や困難への対応は、非認知能力を最もよく観察できる場面です。テストで悪い点を取ったとき、試合に負けたとき、友だちとけんかしたときに、どう反応するかに注目します。泣いて落ち込むだけでなく、原因を考えたり、次への対策を考えたりできるかは、レジリエンスと問題解決能力の表れです。

年齢別の観察ポイントも意識しましょう。乳幼児期(0〜3歳)では、養育者への愛着行動、感情の調整、好奇心の表れ、簡単な我慢ができるかを観察します。幼児期(4〜6歳)では、友だちとの協力、ルールを守る姿勢、失敗への対処、役割遊びでの想像力を見ます。学童期(7歳以降)では、自己管理能力、長期的な課題への取り組み、チームでの協力、失敗からの学びを観察します。

観察する際の注意点として、一度の行動だけで判断しないことが重要です。体調や気分によって行動は変わるため、日々の積み重ねの中で傾向を見ます。また、他の子と比較するのではなく、その子自身の成長を見ることが大切です。数ヶ月前と比べてどう変わったかに注目します。

このように、家庭では日常生活の様々な場面を通じて、こどもの非認知能力を観察することができるのです。

観察したことを記録に残すと、成長をより明確に把握できます。

こどもの非認知能力の成長を記録する方法

こどもの非認知能力の成長を記録するには、日記やメモに具体的な行動とその場面を書き留め、定期的に振り返ることで、小さな変化や成長に気づくことができます。

観察するだけでなく、記録に残すことで、こどもの成長をより客観的に把握できます。「なんとなく成長した気がする」ではなく、「3ヶ月前は〇〇だったけど、今は△△できるようになった」と具体的に確認できます。記録は保護者自身の関わり方を振り返る材料にもなります。

記録の方法は簡単で構いません。専用のノートやスマートフォンのメモアプリを使い、気づいたことを書き留めます。毎日書く必要はなく、週に1回程度、印象に残った行動を記録します。

記録する内容は、日付、場面、具体的な行動、保護者の対応、こどもの反応です。例えば、「2024年11月15日、夕食時、妹が泣いていたときに、自分から『どうしたの?』と声をかけ、ティッシュを持ってきた。『優しいね』と伝えると、嬉しそうに笑った」といった具合です。

抽象的な表現ではなく、具体的な行動を記録することが重要です。「協調性が育った」ではなく、「友だちとおもちゃを『一緒に使おう』と提案できた」と書きます。「やり抜く力がついた」ではなく、「難しいパズルに30分取り組み、完成させた」と記録します。

ポジティブな行動だけでなく、課題となる行動も記録します。ただし、「宿題をやらなかった」だけでなく、「宿題を後回しにしていたが、『明日の朝やる』と自分で計画を立てた」というように、前向きな側面も書き留めます。

月に1回程度、記録を振り返る時間を持ちます。「先月は友だちとのトラブルが多かったけど、今月は自分で解決できることが増えた」「以前は朝の準備に声かけが必要だったけど、今は自分から始められるようになった」といった変化に気づけます。

写真や動画も記録の一つです。作品を作っている様子、友だちと遊んでいる様子、発表会での姿などを記録します。後から見返すことで、成長を実感できます。

また、こども自身と一緒に振り返ることも効果的です。「半年前と比べて、何ができるようになった?」「何が楽しかった?」「何が難しかった?」と聞くことで、こども自身の自己理解も深まります。保護者が気づかなかった、こども自身の感じている成長を知ることもあります。

記録の目的は、評価することではなく、成長を確認し、適切な支援を考えることです。「ここができていない」と欠点を指摘するのではなく、「ここが伸びている」と成長を認め、「次はこんな経験をさせてあげよう」と考える材料にします。

このように、簡単な記録を継続することで、こどもの非認知能力の成長を具体的に把握し、日々の関わりに活かすことができるのです。

記録をつける際や非認知能力を測る際には、いくつか注意すべき点があります。

非認知能力を測る際の注意点

非認知能力を測る際には、数値化や他者との比較にこだわらず、その子自身の成長を長期的に見守り、個人差を認めることが最も重要です。

非認知能力を測ったり観察したりする際には、いくつか注意すべき点があります。間違った捉え方をすると、かえってこどもの成長を阻害してしまう可能性もあります。

第一に、数値化にこだわらないことです。「忍耐力が5点満点中3点」といった評価は、非認知能力の本質を捉えていません。数字で表せるものではなく、質的な変化や成長の過程を見ることが大切です。「前より長い時間集中できるようになった」「以前より自分から挑戦するようになった」という変化に注目します。

第二に、他の子と比較しないことです。「お友だちの〇〇ちゃんはもっと協調性がある」といった比較は、こどもの自己肯定感を傷つけます。非認知能力の発達には個人差があり、それぞれのペースで育ちます。その子自身の過去と比較して、成長を認めることが重要です。

第三に、短期的な評価で判断しないことです。今日できなかったことが、来週にはできるかもしれません。一度の失敗で「この子は忍耐力がない」と決めつけるのではなく、長期的な視点で見守ります。非認知能力は、時間をかけてゆっくりと育つものです。

第四に、測定すること自体が目的にならないよう注意します。記録をつけることに熱心になりすぎて、こどもとの関わりが疎かになっては本末転倒です。観察や記録は、より良い関わり方を考えるための手段であって、目的ではありません。

第五に、特定の非認知能力だけに注目しすぎないことです。「やり抜く力を育てなければ」と焦るあまり、こどもに無理をさせては逆効果です。非認知能力は相互に関連しており、バランスよく育つことが大切です。

第六に、保護者の価値観を押し付けないことです。「リーダーシップが大切」と考えても、こどもは縁の下の力持ちタイプかもしれません。その子の個性や強みを認め、それを伸ばす視点が重要です。

第七に、完璧を求めないことです。こどもも大人も、常に非認知能力を発揮できるわけではありません。疲れているとき、機嫌が悪いときは、いつものようにできないこともあります。それは当然のことで、責める必要はありません。

第八に、文化的・社会的背景を考慮することです。協調性の表れ方は、文化によって異なります。日本では控えめであることが美徳とされることもありますが、他の文化では自己主張が重視されます。一つの価値観だけで判断しないことが大切です。

最も重要なのは、測定や観察が、こどもを評価し格付けするためではなく、その子をより深く理解し、適切に支援するためのものだということです。「この子の非認知能力は低い」と判定することが目的ではなく、「この子は今こんな力を持っていて、これからこんな経験をすることで成長できそうだ」と理解することが目的です。

非認知能力は、学力テストのように客観的に数値化することは困難ですが、日常生活の中でこどもの行動を丁寧に観察し、その変化を記録することで、成長を把握することができ、大切なのは点数をつけることではなく、その子自身の成長を長期的に見守り、個人差を認め、適切な支援を考えることなのです。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。